先日、鍼灸の勉強会で矢作先生の講演を聞く機会がありました。矢作先生は救急医療を始め、色々な分野で貢献されていて、数多くの著作もベストセラーになっています。
矢作先生に会ったことのある人なら誰でも驚くのではないかと思いますが、とても還暦を迎えたとは思えない、時間を超越した若々しさで輝いています。
ご本人は特に健康を意識していないそうで、それが健康の秘訣とも仰ってました。運動も適当で、基本的に野菜しか食べず(卵は食べるそうですが)。あまり必死になって健康を追いかけるのも逆効果なのかな、とふと思いました。
多くの患者さんの臨終に立会い、色々な体験をされた矢作先生のお話しはとても奥深く、質実剛健な一昔前の日本人気質の美しさ、臨死現象、天皇制など、多岐にわたりました。魂は肉体が死んでも残る、とも語っていました。
現代医学の最前線で活躍してきた先生が「心身一如」を唱えるのは新鮮でした。現代医学では、一般に病んだ部分のみを治療し、心と体を切り離して考えます。
「心身一如」とは、東洋医学の基本的な思想で、心と体は密接に結びついていて切り離して考えることは出来ない、という意味です。心に無理がかかると体に不調が現れ、体が弱っている時は心も影響されます。
「病気になった時は、体が何かを伝え様としている時です。例えば、癌は本人がつくり出したもの、癌は自分の細胞です。除去することに全力を注いでも、西洋医学は対症療法で、根本的な原因の追究はしません。自分の体が何を訴えているのか、耳を傾けて下さい。病気になった時は体からのメッセージを受け止めて、自分と対話しましょう」と矢作先生が話していたのが、印象的でした。
矢作先生の知り合いで、スタントマンをしている方が、今日で最後にしようと思った日に事故にあい、下半身不随になってしまったそうです。必死で苦しいリハビリを頑張っていましたが、ふと、もう今まで体を酷使してきたのだから、楽をさせてあげようと、歩けなくなった自分を受け入れて、無理をするのを止めたそうです。それから体はどんどん良くなり、今は確かトレーナーとして働いていらっしゃるとか。
ゆっくり休みたくても、ちゃんとした食生活をしたくても、仕事や家庭が忙しくてなかなか時間が取れない方も多いと思います。相当無理を重ねていても、疲れがたまっていても、悪い生活習慣を続けていても、自分では案外気がつかないものです。
逆に、どうにかしたくても、何をどうすればいいのかわからない時もあると思います。今は色々な健康情報が錯乱しているし、何年かするとあの健康法はやっぱり良くなかった、ということもよく聞きます。何が正しいのか、本当に混乱しますね。
人は一人ひとり皆違います。ある人に効いたからといって、他の人にも効くとは限りません。
どこかが痛む時、なんとなく調子が悪い時は、体がもっと労わって~、と訴えかけてくれているので、何かを変えなければいけないきっかけなのでしょう。
目を閉じて、自分の体にどうしたいのか尋ねて、何かひらめきがあれば、その声に従って行動をとるのみ。言うは易し、ですが。でも、人って皆、何にでも答えをすでに自分の心の中に持っている様な気がします。
ちなみに、講演の後、「人は死なない」「日本のお役目」など、矢作先生の本を何冊か読んでみました。私は「世界一美しい日本のことば」が、一番言葉が心に響きました。人にどう思われようが、自分の考えたことを信じて、信念を持って話すのは、勇気がいることだと思います。徹底的な前向き思考が、あの若々しさの秘訣なのかも知れませんね。